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「歯科健診が健康長寿の要になる!」松尾通氏
- 2017/8/17
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日本サプリメント協会では、最も注目したい人をインタビュー形式でご紹介。
今回は日本アンチエイジング歯科学会の会長、松尾通氏に「歯科健診が健康長寿の要になる!」についてお話を伺いました。
歯科健診が健康長寿の要になる!
松尾通氏
日本アンチエイジング歯科学会 会長
■歯周病と糖尿病の深い関係
後藤:今日は、日本アンチエイジング歯科学会の会長を務める松尾先生に、歯科における「健康」のあり方をお伺いしたいと思います。
超高齢社会を迎えて、「健康長寿」をかなえるための「歯」の役割はどのようなものなのか、歯科医療からアプローチする「健康」についてどのようにお考えなのか、お話を聞かせていただけますか?
松尾:今、私たちは「食」に注力しているんですよ。食べることはまず「口」や「歯」から始まるでしょう?まさに歯科の役割として、「食」を考えることは重要な問題なんです。
それと、歯科は他の診療科と違って比較的長時間、患者さんが滞在しているので、日常会話がしやすいとか、食事のことを相談しやすいといった歯科ならではの長所もあります。ですから、生活習慣に関わる問題、たとえば栄養や運動、睡眠といった日常生活のさまざまな話題から、その方の生活や健康にかかわるチェックやアドバイスができるのです。
後藤:なるほど、歯を治療するばかりでなく、患者さんの健康に関するアドバイスを行いやすい場所なんですね。でも、そうすると歯科の専門知識だけでなく、健康にかかわる広い知識が必要になりますね。
松尾:そうです。だから日本アンチエイジング歯科学会では、いくつかのジャンルで認定医の制度を設けて研鑽に努めています。「サプリメントアドバイザー」の講座もありますよ。とくに今、注力しているのは「糖尿病」専門医との連携ですね。
後藤:それは興味深いですね。糖尿病と歯科がどのように関連するのですか?
松尾:近年、「糖尿病患者の歯周病を治療することで、血糖コントロールが改善された」という報告が増えてきています。
またいくつかのデータでは、「糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて2倍強の頻度で歯周病が起きやすくなる」、あるいは「歯周病の人は歯周病でない人よりも、糖尿病の罹患率が約2倍高い」といったことが示されているのです。あるいは歯周病のある人は、HbA1C(過去1~2カ月間の血糖値の平均を表す検査値)が高い人が多く、「糖尿病予備軍」の頻度が高いことも事実です。
つまり、「糖尿病と歯周病」を連携して治療、あるいは予防することで、大きな成果を生むだろうことが示唆されているわけです。そのためには互いの情報や知識の交流が必要になってきます。そこで私たちの学会では、糖尿病専門医をお招きして講演会を開催したり、テキスト(※参照)を活用したりしています。
■お口の健康が、身体の健康につながるわけ
松尾:歯周病というのは慢性感染症なんですが、口腔と全身は血管を通してつながっているので、歯肉の毛細血管から血液中に歯周病菌が入り込むと、それが全身に運ばれていき、たどり着いた臓器や血管壁で炎症を起こす可能性があります。とくに心臓や脳、子宮などでの炎症との因果関係が注目されています。
後藤:糖尿病だけではないのですね。
松尾:そうですね、ほかにも唾液に歯周病菌が混ざって、それが気道に流れ込んでしまうと肺に影響が現れます。
そのことを認識させられたのが、東日本大震災で被災した気仙沼市の出来事です。あの震災直後、じつは避難民の多くに肺炎が発生したのです。当初は、肺炎の原因はオイルダストなどの粉塵吸入によるものだろうと考えられていたのですが、詳しく調べてみるとどうもそれが原因ではないと。
というのも、気仙沼市のある特別養護老人ホームでは、震災後、100名以上の高齢者が避難民として暮らしていたにもかかわらず、一人も肺炎患者は出なかった。その理由が、うがいやブラッシングなどの口腔ケアを積極的にすすめていたためで、これが肺炎の予防に寄与したのだということがわかったのです。
後藤:歯周病はたんに歯科だけの問題ではないのですね。となると、そうしたさまざまな病気の「予防」という意識を持たなければなりませんね。
松尾:ですから私たちは今、「歯科内科」を提唱しているのです。たとえば患者さんの炎症状態を把握するための「高感度CRP測定」なども取り入れていきたいですね。
政府もこのことをようやく認識し、6月の臨時閣議では、「骨太の方針」の『健康増進・予防の推進』に「口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者に対する口腔機能管理の推進など歯科保健医療の充実に取り組む」という文言が入りました。
後藤:歯の健康が身体の健康を守り、医療費の削減に大きな成果をもたらす可能性があるというわけですね。
松尾:ええ、「予防歯科」という考え方は日本にはまだ根付いていませんが、たとえばスウェーデンなどでは、1970年代に国家的な一大プロジェクトとして「予防歯科」をスタートさせ、その効果がいかに大きいかということを証明していますよ。それは「治療」ではなく「教育」によって成果を上げているのです。
後藤:そうですか。ドクターだけでなく、私たち生活者も知識や情報を共有することが肝心なんでしょうね。ちなみにブラッシングのほかに有効な予防手段は何かありますか?
松尾:私がスウェーデンに行ったときに、あちらで研究されていた「ロイテリ菌」という乳酸菌の歯周治療効果を知ったのですが、これは手軽でいいでしょう。流行りの腸内フローラではなく、「口腔内フローラ」の改善です。そういえば今年の秋に、ロイテリ菌入りヨーグルトが発売されるようですよ。
後藤:それは手軽でおいしそうですね!楽しみです。今日はどうもありがとうございました。