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取材コラム 第21回:和田政裕氏
- 2021/7/1
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「食品の裏側にも光を当てていく『食毒性学』の心得」
城西大学薬学部 医療栄養学科教授 和田政裕氏に聞く
本来、毒性を持たない食品が、適用の仕方によって毒性を発揮する。こうした食品の表と裏の両面を見ようとする「食毒性学」というユニークな学問。和田氏はまた、科学的データも、迷信や伝承も、生物情報として同じ価値を持つという。ときには顕微鏡が示す事実が、ある伝承の根拠を裏付ける。非科学的だと考えられているものに隠されているメッセージを受け取る時、そこに研究の醍醐味があるという。
「私の若い頃、コンフリーが強壮野菜として体に良いといわれ、それを濃縮して健康食品にしたら強い毒性が現れて、肝機能障害がでたという健康被害がありましたが、たとえばこれが食品の裏面にスポットを当てるという食毒性学の事例なんですね」
あまり聞きなれない「食毒性学」という研究領域。本来、毒性を持たない食品というものが、その適用の仕方によって毒性を発揮し、食した人に被害を与えるという食品の暗い面を探っていく学問だ。
近年、脂肪毒性とか糖毒性という表現をよく耳にするが、通常の食品として食べているときは毒性の無作用量だが、過剰摂取になったり、濃縮により毒性域に達したことで、有益な食品が有害なものに変わる。では、私たちの体にとって適量とはどれくらいなのか?それを探求していく。
「たとえば漢方薬をみると、自然界にあるさまざまな生薬を組み合わせることで、薬理作用を高めたり毒性を打ち消し合ったりして、じつに巧妙に調整されています。これらは数千年におよぶ知恵ですが、なぜそうした組み合わせになっているのかは、未だによくわからないわけです」
いわゆる言い伝えや迷信といったものに科学的根拠はないとして、評価に値しないという意見もある。しかし和田氏は、そうしたものには何かメッセージが隠されているのではないかと考えている。それを現代の科学でどこまで解明していけるかを、研究の指針としているのだという。
「今、薬膳の研究をしているのですが、たとえば芋と卵と砂糖の組み合わせは、薬膳的にはあり得ないんですね。でもこれってスイートポテトですよね。もしかしたら、薬膳が生まれた当時と現代とでは環境や生活、人体の状況などに大きな違いがあって、そこをどう見るかという視点も必要かもしれません」
詳細なデータにたどり着いたら、そのあとさまざまな視点から俯瞰してみる。そこから仮説を導き出す。常にものごとを表と裏から見る「食毒性学」の本質が、和田氏の研究の姿勢のようだ。
ジャーナリスト 後藤典子