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取材コラム 第11回:山本万里氏
- 2021/2/4
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「食品の新たな機能の発見は、私たちに何をもたらすか」
農研機構 食品研究部門 ヘルスケア創出研究統括監 山本万里氏に聞く
農業と食品産業の分野で、わが国最大の研究機関である農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)。この中で、農学博士として存在感を放っている研究者の一人である山本万里氏を訪ねた。生鮮食品の機能性について、これまでにない新たな視点と探求心で数々の成果を上げ、農業者や食品企業をバックアップするとともに、食による健康長寿に向けた研究活動にも力を入れている。
「お茶の研究テーマについては、最初、がんの転移抑制作用を探っていたのですが、もっとセルフケアの視点で見ようということで、抗アレルギー作用の研究を始めることにしたんです」
もちろん、その道のりは平坦ではなかった。アレルギーの評価系を作るまでに数年を要した。多くの茶葉で細胞研究を進め、ようやく「べにほまれ」を母に持つ「べにふうき」にたどり着いたのが5年後。「メチル化カテキン」という機能性成分を最も多く含んだ茶葉だった。
「次に、この機能性成分をどのように飲めば効果的なのかを調べる人試験を行って、抽出する温度、含有量の多い部位、体内の滞留時間、必要摂取量、飲むタイミングや時期などを大学と共同で特定していきました。また、お茶ですから食べ物と一緒に取るという想定で、メチル化カテキンの機能を高める相性の良い食品として、生姜とビタミンAをピックアップしました」
生姜はアレルギーの炎症作用の抑制に働くこと、ビタミンAはカテキンを細胞に取り込む受容体の力を増強させる因子であることがわかっている。よって、生姜や、ビタミンAが豊富な緑黄色野菜を取った食後に飲むことを、また、1日の摂取量を34mgとし、熱湯で淹れたお茶を3杯程度飲めばよいことを導き出した。
他にも”赤い緑茶”である「サンルージュ」は、眼精疲労やピント調節の改善に良いとされるアントシアニンを多く含む茶葉として開発された。2011年に品種登録されたばかりの新顔だが、茶湯の色がピンクになることから、日本よりも台湾やドイツで人気になっているという。
また、ストレス緩和作用の知られているテアニンを多く含んだ「さえみどり」や「さえあかり」、抗アレルギー成分である「ストリクチニン」がリッチなお茶の開発など、それぞれの機能性をもった茶葉を続々と健康市場に送り込んでいる。
「茶葉によって、それぞれ異なる健康効果があるのです。その機能性に目を向けると、その時々の自分の体調にあわせて茶葉を選び分けて飲むという、ちょっとウンチクのある喫茶の楽しさが生まれますね」
近年、日本人は日本茶を飲まなくなったが、これまで見えていなかった新たな健康効果を知ることで、お茶のある生活を取り戻すのかもしれない。
ジャーナリスト 後藤典子