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取材コラム 第9回:天ケ瀬晴信氏
- 2020/12/10
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「5兆円の医療費削減は、消費者への健康教育にかかっている?」
広島大学シニアURA、東北大学特任教授 天ケ瀬晴信氏に聞く
23年間にわたり、米国で医療・健康分野に携わってきた氏は、サプリメント黎明期の市場や国の施策に、一人の研究者として関与してきた。その経験から、法制度のあり方や企業としての姿勢、それらが消費者や市場にどのように反映するかということを、多面的に把握する数少ない専門家だ。そして今、日本において、培った知見やノウハウ、人脈を活かして、健康市場の発展に寄与すべく活躍している。
薬学の博士号を取得した後、栄養学のポスドクとして、米国でキャリアをスタートさせた天ケ瀬氏。「がん研究の中で、やはり薬学だけでは病気の本質をとらえることはできないという思いから、根本にある要因の一つとして食べ物を考えてみようと」。そこで師事したのが、当時の米国栄養学会会長のジョン・ミルナー氏だった。
やがて米国では、栄養補完を目的にサプリメントが台頭し始め、それに伴い、健康被害の報告も相次いだ。そこで国は、適正な知識と情報の必要性を認め、1994年にDSHEA(ダイエタリーサプリメント健康教育法)を制定した。
「この法律の建て付けは消費者の健康教育です。アメリカでは、マルチビタミンが市場の25%のシェアを占めていますが、これは消費者が必要な知識と情報を得ていることの表れともいえるでしょう」
最近の調査では、コロナ禍においてサプリメントの使用量をこれまでより増やしたと回答した人が9割に上ったという。
「国の機関も、業界も、常に質の高い情報提供に努めています。たとえばメーカーの学術担当が、健康食品店を周って販売員に新しい情報提供をしていますので、来店客は販売員に相談しながら、自分に合う商品を選択することができるのです」
実際に、利用者の7~8割が店舗で購入するというが、個々人に必要な情報提供が適正になされるよう整備してきた米国の施策がここにも見える。
そして、こうしたサプリメントによるセルフケアが充実すれば、5兆円の医療費削減が可能だという推計データが、米国に続き、欧州や豪州でも報告されている。
「つまり、サプリメントで代用できるところはそれに任せることで、研究・開発費用を他の医療分野に回せる可能性を示唆したデータだと考えています」
さらに、サプリメントによって消費者の意識が変わることによる行動変容の可能性もあるという。「生活習慣改善の調査をしたところ、食事や睡眠、ストレスなどへの対応をしているという回答が、サプリメント利用者の方が高かったのです。健康意識がカギになるということですね」
消費者の情報活用においては発展途上の日本だが、巷のCMに促されて商品を手にする前に適正な情報収集ができる環境整備が必要なのではないかと、改めて思う。
ジャーナリスト 後藤典子