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取材コラム 第6回:久保明氏
- 2020/9/10
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「人は皆、一人ひとり違うということを大切にしたい」
医療法人財団百葉の会 銀座医院抗加齢センター長 久保明氏に聞く
たぶん日本で最初に「抗老化」に取り組んだ医師の一人として、じつにさまざまなステージで抗加齢医療の新しい試みを実践してきた久保明氏。老いるとはどういうことかを追究することが、予防につながる――その思いを科学的に検証してきた氏に、今、この超高齢社会に投げかける健康へのメッセージは何かを伺った。
抗加齢をアンチエイジングと横文字にすることで、このテーマは広く社会に受け入れられたが、その先陣を切っていた久保氏は、今なおその定義に疑問を投げかける。
「アンチエイジングというとき、まずエイジングの医学を確立し、その指標を明確にすることが先決だと考えています」
エイジングの指標を求めて、最初に立ち上げたのが高輪メディカルクリニックだった。施設内に運動設備を投入し、患者個々人に応じた運動や食事内容を提案するという、これまでにない医療体制を構築した。そして、自分の健康状態を、一般の血液検査では測れない「エイジング」の領域で検証することの必要性を確認し、それを説いてきた。
そのノウハウは、現在、東海大学医学部附属東京病院の「抗加齢ドック」や、医療法人財団百葉の会・銀座医院の人間ドックにおいて、継承されている。
「これまでに3000人を超える方のエイジングの指標を診てきましたが、一人ひとり皆、違うんです。そのことを考えると、どなたにも当てはまるような、これがいい!という健康法はあり得ないだろうと思うんですね」
実際、巷で良いとされているような健康法を実践していても、病に倒れる人々を身近に見てきた氏は、健康に方程式はないと、改めて認識する。
「人の体は、矛盾の複合体です。たとえば血管が若くても、免疫機能が落ちている場合もあれば、ホルモンバランスが良くても、血管の状態が悪い人もいる。一つの個体に、いろんなフェーズをもっているものなんです」
だからこそ、自分の体のことを正しく知っておくことが必要なのだと言う。自分を知らずに、自分に合う健康法を見つけるのは難しい。逆に、自分に合わない健康法を実践したために、健康を害することだってあるだろう。
「世の中の一般常識や概念にとらわれずに、ときどき自分の体の声を聴く習慣を持つこと。これがセルフケアにとって大切です」
最後に、健康の秘訣として、氏はこう結んだ。「人は、やはり一人では弱い存在なので、いろんな人とつながること、一緒に歩いていくことが大事じゃないかと思っています」
ジャーナリスト 後藤典子