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取材コラム 第4回:帯津良一氏
- 2020/9/8
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「気功に治療効果はあるのかという問い」
帯津三敬病院名誉院長、著述家 帯津良一氏に聞く
西洋医学に懸命に取り組んでいる医者ほど、じつは西洋医学の限界を感じている。食道がんの外科手術に卓越した腕を誇っていた帯津氏も、その一人だった。何かが足りない。その何かを求めて見えてきた世界が、「いのちのエネルギー」という目に見えないものだった。そこに希望を見出したという帯津氏にお話を伺った。
「私は長らく、治療に気功を取り入れていますが、はじめて気功を見たのは北京市立肺がん研究所附属病院の庭でしたね」
首尾よく手術を終えても、すぐにまた再発して戻ってくる患者を見て、何か別の手段があるのではないかと探した。ある日「伝統の漢方には何か手があるかもしれない」と思い立ち、それを学びに訪問した北京の病院の庭で、たまたま目にしたのが「気功」だった。武道の心得のある氏は、眺めているうちにその姿に感銘を受け、直観的に「これだ!」と確信したという。そして当時はほとんど認知すらされていない「気功」を治療に取り入れるために、自分の病院を作るという大胆な決断をした。
「もちろん当時は、だれも見向きもしませんよ。医療技術がどんどん進歩して、CTだのMRIだのが出てきますから、皆、そうした最新医療を受けたいわけですよ。なんだか怪しそうな気功なんてご免こうむりたい、となるわけです(笑)」
それでも粘り強く続けているうちに、少しずつ参加者は増えた。ただ、ときに「エビデンスはあるか?」と聞かれることがある。それにはこう答えている。「うちの病院でがんの手術をした人たちが患者会を作っていますが、ずっと気功をやりながら20年、30年と元気に生きている、その患者さんたちを見てくれ」と。
だれもが持っている「治る力」。ヒポクラテスが、それを「ネイチャー」と言ったことから「自然治癒力」という言葉が生まれた。
「どんなことでも、治ろうとしてやっていることを疑ってはいけません。治療と心が一つになってはじめて治癒力になるのです。私はそれを”いのちのエネルギー”と呼んでいます」
”いのち”とは何か?それはホリスティック医学の考え方の中にある。要素還元主義で局所だけを見る西洋医学への反省と批判から、1960年代にアメリカ西海岸で起こったホリスティック医学は、人間まるごとを見る医学で、「からだ・こころ・いのち」が調和してはじめて健康だと考える。
「血液検査データが正常だというだけでなく、からだの内に躍動するものが、衝動力とでも言いましょうか、そうしたエネルギーが沸々とわいているような毎日を送れればいいのです」
氏は、それを「ときめき」だと言う。何かにときめいて生きることを、私たちは忘れていないだろうか。
ジャーナリスト 後藤典子