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取材コラム 第1回:奥村康氏
- 2020/9/5
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「コロナから逃げず、利用する解決策」
順天堂大学医学部免疫学特任教授 奥村康氏に聞く
世の中はコロナ禍により、この100年来、見たことのない風景となった。過去のSARS、MERSと比較して致死率の低い弱毒性ウイルスであるにもかかわらず、社会的には強いパニック状態を招いた。また政府は、今後もウイルス感染を避けるため「新生活様式」を国民に求めている。はたして、私たちはこれほどにウイルスに戦々恐々として暮らしていかなければならないのか?免疫学の国際的権威である奥村康教授に伺った。
「今回のウイルスとの戦いに勝つ唯一の方法は、集団免疫です。それ以外にありません」と奥村氏は言う。
人類はこれまで幾度となくウイルスと戦い、その抗体を持つ者を一定の割合に拡げて、生き延びてきた。そうして新たな免疫を獲得してきたのだ。これに倣えば、今回のコロナも、医療崩壊を起こさないような方法で感染者を増やしていく、という戦略しかないと言う。
ただ、現状の政府やWHOの方針は「隔離政策」「ステイホーム」に徹している。これには一時の効果はあるものの、限界が見えるという。選択する道を誤れば、収束までの期間や経済的損失、人為的な犠牲者の数は相当なものになるだけでなく、収束が見込めない可能性もある。
今回、選択した道は、「感染症」という専門分野から導き出した方策で、できるだけウイルスから逃げようという戦略だ。そのために社会、経済、生活に及ぼす大きな犠牲はやむなし、という判断だ。
これを「免疫学」という分野から見れば、「自粛などせずに日常生活を送りながら、自然に人々が感染することで、免疫を持つまでの時間を短縮して早く戦いを終わらせる、という道もある」と、奥村氏は言う。
そんなことをすれば、ニューヨークやサンパウロのような医療崩壊や死亡数の増加につながりかねないという反論が上がりそうだが、奥村氏は「COVID-19には、悪性度の高いL型と比較的弱いS型があり、日本で見られるのはおもにS型。このS型に感染して得られる獲得免疫はL型にも通用するので、免疫を持つための感染ということを考えれば、日本での感染は有利だともいえる」と、免疫の観点から見たもう一つの道を論じた。
しかし、重症化することへの恐怖はつきまとう。これに対して奥村氏は「ウイルスに対する免疫の反応が低い人は少数ですが、必ずおられる。こういう人は重症化しやすい。また免疫力、とくにNK細胞の活性が弱まっていると、症状が重くなる可能性は高い」と言う。
ウイルスを完全に排除することが不可能なら、感染を経験して免疫を獲得するのも手。そのためにも、私たちの体に備わっている免疫力を日常的に整えておくことが肝心だということか。
ジャーナリスト 後藤典子